山中教授のマニフェスト(OELキャンペーン 596)

2014・10・27(月) 学術研究と産業技術

青色LEDの開発に成功した日本人3名が2014年ノーベル物理学賞に輝いた。日本の科学技術力が評価された結果である。

人々が今回のノーベル物理学賞を異例とするのは、従来の受賞者のように基礎研究のみならず、産業化に結びつく応用研究が評価されたからである。

但し、これらの業績は20年前、日本が躍進を続けていた「Japan as No. 1」の時代の成果である。社会がその後20年の停滞を経た現在、わが国がさらに科学技術で世界に輝く保障は全くない。

どちらかというと日本は科学技術の産業化で世界に評価されてきたが、いまや多くの基礎研究の成果が海外に奪われ産業化で後塵を拝している。

所で国が進める科学技術政策を見るとより深刻な状況にある。バブル崩壊後、日本の科学技術政策は従来の基礎研究中心から産業化を重視する政策に大転換した。

官庁再編成が時代の流れとなり、基礎学術研究推進の文部省と実用化、事業化をモットーとする科学技術庁が合併になり、文部科学省が発足した。経済産業省は元来産業化技術の推進が役目であるから、国を挙げて応用偏重に傾いた。

大学でも産業への成果移転を促すTLO(技術移転機関)制度が作られ、さらに大学発ベンチャーや産学連携が唱えられ、大学や公立機関の研究テーマも応用中心にシフトしていった。

2013年の調査では日本の大学の研究費のなかで応用研究・開発研究の割合は50%となり、米国の大学では70~80%を基礎研究に費やしているのと対照的である。

それにもかかわらず応用研究力に陰りがでて、大学の発明が産業化された数は米国の4分の1に止っている。つまり現在の日本は基礎から応用への橋渡しに失敗しさらに基礎研究の弱体化という二重の打撃をうけているのだ。

わが国が科学技術立国として今後も活躍してゆくには、質の高い基礎研究とそれを応用につなげる研究構造の再構成が必要である。

今回の青色LEDをめぐる産業技術のノーベル賞受賞は20年前の業績であることを肝に銘じて、現代の対策を早急に整えなければわが国の将来は危うい。

かつての大学では研究の自主性と自由度が強く保証され、闊達な研究展開が出来たものである。現在では研究費のしめつけと共にその獲得のためのペーパーワークに多大の努力が必要となり、はやりのテーマに研究者が動員されるという弊風が吹き荒れている。

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山中 千代衛